2026.02.07
「愛」と「変化」を問い続ける組織が、2年に一度、野生に還る理由

「愛」を経営の根幹に据え、ウェディング事業や法人イベントプロデュース事業を通じて、本質的なパートナーシップのあり方を問い続ける株式会社CRAZY。 同社には、2年に一度、全社員で野生の森へ入る全社のカルチャーキャンプがあります。 なぜ、彼らは便利な都心の会議室ではなく、あえて不便な野外へ「立ち還る」のか。そして、なぜその舞台として「ライジングフィールド軽井沢」を選び続けるのか。代表の森山氏に、その深層にある人間観と、経営哲学を伺いました。
組織とは、社員の人生そのものを受け止める「器(うつわ)」である
── CRAZYさんは「愛」というものを扱う事業をしていますが、どのような組織像を描かれているのでしょうか。
森山氏: 私たちは、愛というものをテーマに企業経営をしている会社です。ウェディングやイベントプロデュース、キャリア支援などを通じて、人々の真にある想いや愛情を扱う事業をしています。だからこそ、CRAZYで働く社員にとっても、この会社が単なる労働力を提供する場であってはならない。自分の人生そのものを生きるための「器(うつわ)」でありたいと考えています。
── 「器」という言葉には、どのような響きを込めているのですか?
森山氏: 安心できる場所、と言い換えてもいいかもしれません。現代社会において、本当の意味で「自分の弱さ」をさらけ出せる場所は驚くほど少ない。職場はもちろん、家庭ですら役割を演じなければならないことがあります。 人間は本来弱い生き物だからこそコミュニティが必要なのに、それが機能していない。だからCRAZYでは、あえて「弱さ」を露出できる環境をつくることを組織づくりの起点にしています。過去の痛み、家族との関係、自分の至らなさ、そういった 人間的な背景を丸ごと受け止める「器」があって初めて、人は本当の意味で他者と繋がり、力を発揮できると考えています。

「仕事」を通じて、自らの認知の限界(パラダイム)を超えてゆく
── 一般的に企業研修や仕事の目的は「スキルの向上」や「成果」に置かれます
森山氏: おっしゃる通りです。私たちは「インサイド・アウト」(※1)という考え方を大切にしています。幸せになりたいと願うなら、環境のせいにするのではなく、自分の認識を変えていくしかない。
仕事をしていると、必ず自分の思考の癖や限界――私たちはこれを「パラダイム」と呼びますが――に突き当たります。「上司に協力を求めるのは怖い」「家庭ってそんなに踏み込むものではない」といったような思い込みですね。仕事を通じてそのような「パラダイム」に気づき、それを乗り越えていく。
── 成果を出すための手段として自分を変えるのではなく、自分自身の変容そのものが仕事であると。
森山氏: そうです。自分の内面が変われば、世界の見え方そのものが変わって、結果としてお客様への提供価値も上がり、お金も頂ける。それが本来の「仕事」だと定義しています。 だから、究極的にはマネジメントでモチベーションを上げる必要なんてないんです。みんな自分の人生を良くしたいと思って生きているわけですから、その障害を取り除き、変容を支援することこそが、組織 が提供できる最大の価値なんです。

経営者としての「儀式」と、センス・オブ・ワンダー
── そうした深い変容を組織全体で起こし続けるために、森山さんご自身はどのような状態でいることを心がけているのでしょうか? 非常にエネルギーの要ることだと思いますが。
森山氏: 私自身も迷いますし、未熟です。だからこそ、会社の中に大事な思想を言葉にするときや大事な決断にする前には、必ず一人で「センス・オブ・ワンダー」(※2)を感じられる場所へ行きます。これは私にとって欠かせない「儀式」なんです。
── 儀式。
森山氏: はい。都内のカフェでも場所によってはできなくはないですが、やはり自然の揺らめき、風の音、人智を超えた圧倒的な何かを感じられる場所でないとダメなんです。 そこで、頭で考えたロジックを一度すべて手放します。自分が自然の一部に取り込まれていくような感覚の中で、身体から湧き上がってくる言葉、あるいは降りてくる言葉をひたすら書き出していく。そうやって、経営者としての役割や日常の鎧を脱ぎ捨てて、自分の深いところにある「真実」に触れる作業をします。
── その感覚こそが、森山さんが大切にされている「センス・オブ・ワンダー」の正体なんですね。
森山氏: そうです。自分が「個」として固執している状態から離れ、大きな流れの一部であることを感じる。その感覚を経て紡ぎ出された言葉は、社員の心に届き、組織を動かす力を持つと信じています。
組織の「空気」を一気に書き換える場所
── 森山さん個人の儀式として「自然」が必要なのは理解しました。では、2年に一度の全社カルチャーキャンプで、社員全員を野外へ連れ出す狙いはどこにあるのでしょうか?
森山氏: 目的は、組織の「空気」を一気に書き換えることです。 日常の中で制度をいじっても、組織文化の根本にある「空気」を変えるには時間がかかります。だから2年に一度、全員で「U理論」(※3)でいうところの「Uの谷」の底まで潜るような体験をする必要があります。そのために、ホテルや研修施設ではなく非日常の「野生」がある場所を選ぶのは、必然的な選択なんです。
── 施設の便利さではなく、ある種の「不便さ」や「自然の圧力」が必要だと。
森山氏: 建物の中に入ると、脳が無意識に「会社」や「研修」という枠組みをダウンロードしてしまい、「会社員」という役割を演じてしまいます。これでは深い変容は起きにくいのです。 でも、コントロールできない大自然の中に身を置くと、その社会的な役割が強制的に解除されます。風が吹き、雨が降り、時には不快で、思い通りにならない。その環境下では、誰もがただの「人間」に戻らざるを得ない。役割を脱いで「人間」同士として向き合うために、あの場所が必要なんです。
「人」がつくりだす磁場が、組織の変容を加速させる
── 数ある自然施設の中で、ライジングフィールド軽井沢を選び続ける決定的な理由は何ですか?
森山氏: 理由は「人」がつくりだしている「磁場」にあります。 以前に何度か、パタゴニアの国立公園を訪れているのですが、最初に必ずレンジャーの方が「私たちはこの自然を愛しているんです」と説明します。その思いに触れた観光客は意識が変わり、在り方が変わり、場全体の空気が変わるのを目の当たりにしました。人の想いや祈りのようなものが、その場の意味をつくりだしていたんです。
── フィールドスタッフ側の「想い」が、場の質そのものを変えていると。
森山氏: はい。ライジングフィールドのスタッフの皆さんがあの森を愛し、誇りを持って守っているからこそ、そこに強力な「磁場」が生まれている。 私たちはそこで非常に繊細な、人の心や痛みを扱うプログラムを行います。だからこそ、スタッフ側の心の有り様が整っていない場所では安心して場を開けないんです。ライジングフィールドなら、私たちの想いと彼らの想いが共鳴し、守られた空間の中で深い対話ができる。それが他には代えがたい理由です。
「人間であること」を確認する装置として
── 来年はCRAZYさんにとっても15周年の節目ですね。組織が拡大していく中で、ライジングフィールドでのカルチャーキャンプは今後どのような意味を持っていくのでしょうか。
森山氏: これから社員が100人、200人と増えていっても、みんなが本質で繋がれる場はずっとつくり続けたいですね。 ただ、私個人の関わり方で言うと、私はこのキャンプで「変わろう」としているわけではないんです。私は常に、キャンプの当日に向けて事前に自分自身の変容を済ませ、「変容した結果」としてそこに立つようにしています。
── 社長自身は、当日までにすでに変わっていると。
森山氏: そうです。私が「変容を求める側」としてそこにいてはダメなんです。「変容した存在そのもの」としてそこに立ち、みんなを迎える。そうでないと、本当の意味で社員の心には届きません。 その上で、私にとってこのライジングフィールドという場所は、自分が「人間であることを確認できる装置」なんです。
── 人間であることを確認する装置、ですか。
森山氏: ええ。事前にどれだけ準備をして、変容した状態で臨んだとしても、あの大自然の中に立つと、痛感するんです。自分は未熟な、ただの一人の人間であると。 そして社員同士も、「またここで、人間であることを確認できたね」と確かめ合う。
── 役割や立場を超えて、ただの人間同士として繋がり直すんですね。
森山氏: そうです。未熟な人間だからこそ、どれだけ進歩できたのか、これからどう生きたいのかを問い続けることができる。 そうやって本質的な繋がりを確認し合えるからこそ、私たちはまた日常に戻り、企業として健全に拡大していけるのだと思います。
組織がどれだけ大きくなっても、2年に一度この森に還り、人間としての原点を確認する。そんな場所であり続けてほしいと願っています。
注釈:
※1「インサイド・アウト」
書籍『7つの習慣』の中で、環境や他人に原因を求めず、自分の内面(誠実さ、習慣)を変えることで結果を変えるという「内から外」へのアプローチ、と表現される
※2「センス・オブ・ワンダー」
自然の神秘さや不思議さに目を見はる感性、美しさに心を動かされる力。アメリカの生物学者レイチェル・カーソンが同名の著書で提唱し、自然環境への愛や環境教育の原点として知られる。知識で理解するのではなく、全身の五感で自然を感じ、新鮮な喜びや驚きを大切にする心を意味する
※3 「U理論」
MITのオットー・シャーマー博士が提唱した、過去の延長線上ではない「真のイノベーション」や組織変革を起こすためのプロセス・意識変容モデル
取材協力:株式会社CRAZY 代表取締役社長 森山 和彦 氏
写真撮影:クッポグラフィー
活用施設:ライジングフィールド軽井沢
私たちは、人々が愛し合うための、機会と勇気を提供し、パートナーシップの分断を解消します」をパーパスに掲げ、ウェディングブランド「CRAZY WEDDING」を展開。「IWAI OMOTESANDO」では“おふたり中心”の披露宴スタイルではなく、共に時間を楽しむ“ゲスト中心”の新しいスタイルで行う結婚式を提供し、大手業界クチコミサイト「ウエディングパーク」にて東京エリア内で4年連続で1位を獲得。2026年1月、初のレストラン「CRAZY GRANDE MAISON」を横浜市 みなとみらい21地区に開業。
パーパスを軸に一貫した組織づくり・ブランディングが評価され、株式会社JobRainbowが主催する「D&I AWARD 2023」において最高評価となる「ベストワークプレイス」および「トップインクルーシブカンパニー賞」を獲得。
自然体験活動を通じ、
子どもたちの生きる力を高める
家族の絆を深める
人・組織の可能性を切り拓く




























